初診日の特例、危うく使えなかったかも

立冬あたりが紅葉の季節になってきています。手紙を書く際の時候の挨拶が、ひと昔前と1ヵ月ほどズレているのが感じられることも。それほど暖かくなっているのですね。

 

肢体の障害年金で請求した方のお話です。脳卒中による片まひで、歩行困難になった方でした。倒れて半年でリハビリ入院していたA病院から、B病院で外来治療中にご依頼がありました。

 

障害年金の請求ができる最も早い日は、初診日から1年6ヵ月経った日です。ただし、いくつかの例外が定められており、これより短い期間で請求可能なこともあります。

脳卒中による後遺症で肢体に障害が残った場合もこれにあたります。『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』には、次のように記載されています。「脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から 6 月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき」は、特例的に早く請求できるということです。

 

初診日から、6ヵ月経った日で請求できるケースかどうか、1つの判断材料に身体障害者手帳の診断書を作成してもらっていることがあります。リハビリをしても機能向上・機能回復は見込めず、症状が固定していると医師が判断すると、身障者手帳の診断書を書いてくれます。ただ、そのあと、人によっては機能回復することもあり、「まだ固定していなかった」と医師の見解が変わることも。手帳が交付されているから必ず症状固定、とは言えないのです。

 

話を戻します。この方、倒れた初診日から6ヵ月経ったところで手帳の交付を申請し、車いすで暮らしています。1年以上、リハビリに励んでいましたが、やはり車いすの生活が続いていました。

このような状態だったので初診日の特例で6ヵ月で請求できると踏んでいました。そこで、手帳の診断書を作成したA病院へ診断書の作成依頼をすると、驚きました。「6ヵ月では症状は固定してない。だから、診断書の作成はできない」と回答されたのです。

 

どうやら、こちらの病院は国の定めた認定基準にかかわらず、6ヵ月では障害年金の診断書を書かない主義のようでした。「障害年金の診断書を、初診から6ヵ月で依頼する患者さんも時々います」、と医師は話しました。ところが、誇らしげに「すべてお断りしてきました」と話すのです。「え?」と目が点になってしまいました。

 

医師の考えでは、障害年金を受けると、障害者就労しようという意欲を失うのでけしからん、という理屈のようなのです。もちろん就労意欲をそぐものではないですし、むしろ、年金という定期収入があることで経済不安が減ります。前向きに将来を考える方も多いことを見てきました。障害年金に対する無理解から、医学的見解とは関係のない意図で、診断書の作成時期が操作されてしまっています。とても残念な気持ちになりました。

 

こちらの方は、幸運にも同じ月にB病院にも受診され、診断書はこちらに書いてもらっても不利になりません。B病院の医師に話を聞くと、当然というように「うちに来た時点で症状固定だよ」とのこと。その後はとてもスムーズに診断書を書いてくださいました。この結果、1級の年金が決まりました。

 

A病院のように、障害年金に理解がないのは、国の医師への啓もうが足りないからなのでしょうか。B病院に受容的に対応してもらい、無事に特例で受給でき助かった事例です。A病院の対応はたまたま担当した医師の見解を聞かされただけなのかもしれませんが・・・。いろいろ感じ取ってしまい悲しさも感じる出来事でした。

 

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